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長谷川賢:「francer」

フランス全般に関する旅行情報や各地方や町の楽しみ方など、特に「地方色の豊かさ」をテーマに村めぐり、ワイン、地方文化などをテーマに綴ります。





第25回:モンマルトルの丘

先日、パリに8泊して帰ってまいりました。個人的にも2年ぶりのフランスでしたので、すべてが新鮮でしたが、正直なところ、改めてフランスはいいところだなぁというのを感じた旅になりました。

パリに8泊というのはこれまででも体験したことのない長期の滞在でしたが、オルセー美術館やエッフェル塔など有名な観光名所にも足を運びましたし、パッサージュ巡りやサン・マルタン運河沿いの散策など、通常の観光ルートから少しずれた場所を歩いたりしてきました。

しかし、どこを歩いても、やはりパリは美しいですね。建物の一つ一つが美しい。そのレリーフやバルコニーのデザイン、その建物そのもの、また建物同士が織りなす空間、その一画が醸し出す雰囲気、そしてすべてが計画的に美しく設計されたパリの都市改造計画のすばらしさを改めて感じます。

その中で、何を最初に紹介しようかと思った時、思い浮かんだのが、モンマルトルでした。モンマルトルは比較的有名な観光名所。サクレクールに代表されるパリ市の北部(主に18区)であり、多数のガイドブックにも紹介されています。個人的にも、4・5回は足を運んでいる場所なのですが、なぜか今回はすごく印象的だった場所でした。

実はこの旅でモンマルトルを訪ねたのは、終盤でした。しかし、モンマルトルの丘は、確かに小高い丘の上であり、その上にたつサクレ・クールはパリのちょっと高いところへ行けば見えるので、今やパリのシンボル的存在のひとつといっても過言ではないでしょう。

空港からパリの外周道路ペリフェリックに入る際、ポンピドゥーセンター、モンパルナスタワー、etc。様々な場所でサクレ・クールを目にすることができます。

実はこのサクレ・クール。とても大事な歴史的文化財かと思いきや(たしかに重要ではありますが)、普仏戦争が終わってから19世紀に造られたもので、歴史の話をすれば、パリ市内にある教会のほうがよっぽど歴史はあります。しかし、右岸で最も高いところにある白亜の宮殿風の建物はやはり存在感があり、今やモンマルトルはこの建物を除いては語れないといっても過言ではないでしょう。


(モンマルトルのシンボル サクレ・クール寺院)

というわけで散策のスタートは、やはりサクレ・クールから。やはり坂の上なので、歩いていってもいいのですが、地下鉄2号線のAnvers駅からフニキュレール(坂道を登るケーブルカーのようなもの)に乗っていくのが手っ取り早いでしょう。サクレ・クールの目の前には大きな庭園。ここは映画アメリの舞台にもなりました。そしてサクレ・クール前のテラスからはパリのパノラマが見られます。

パリは曇りの日が多いですが、天気がよく霧がなければ、すばらしい景色を見られるでしょう。サクレ・クールは建造が新しいにも関わらず、そのステンドグラスは第二次世界大戦で破壊され、その後作り直されたもので、見どころというのは、内部のモザイク画くらい。確かにこのモザイク画はすばらしいものですが、ただノートルダムやサント・シャペルのステンドグラスが数百年という時の歴史証人となったことを思うとやっぱりちょっと弱いかなぁと。やはり、サクレ・クールはどちらかというと内部より、外から見たほうがいいかなーというのが感想。

しかし、このモンマルトル地区は、ルーブル宮殿やノートルダムなどの歴史的建造物という、ものすごくインパクトの大きな観光地というのは、サクレ・クールを除けばありません。それなのに、これほどまでに人気のある地区というのは、本当に不思議です。

一般的には、「当時、印象派画家が集まった界隈である」とか「パリの中で素朴な風景が残る」など言われていますが、これは一人でふらふらっと歩いてしまえば、なんてことなく終わってしまう悲しい結果になってしまうのであろうなと感じたものです。というのは、私自身がそうでしたから。


(テルトル広場)

しかし、趣深い風景が確かにモンマルトルには残っています。歴史はそれほど古くはありません。

それでも、その背景を知りながら歩くのと、知らずに歩くのでは大きな差があるんじゃないかと思ったのです。実際に私も、モンマルトルは歩けば歩くほど魅力的な界隈に思えてくるのです。

例えば定番のサクレ・クール寺院の内部とテラスからのパノラマを見たら、すぐ近くにあるテルトル広場へ行くのが定番です。今でも駆け出しの似顔絵かきが露店をだしています。

「いくらいくらで似顔絵を描くよ!」と客引きに精を出す駆け出し画家たちがハイ・シーズンには広場にひしめき合っています。しかし、この広場に面しているサン・ピエール教会をしっかりと見ている観光客は未だ見たことがありません。

不思議なもので、例えば左岸サン・ジェルマン・デ・プレ地区のサン・ジェルマン・デ・プレ教会になると、「パリで最も古いロマネスク様式の教会が・・・」などとガイドブックにも紹介され、ここは観光客も多い。中に入って内部見学をする人たちもいる。しかし、モンマルトルのサン・ピエール教会も、実はサン・ジェルマン・デ・プレ教会と肩を並べる同時期の教会であり、パリに現存するもっとも古い教会のひとつに数えられているのです。どちらかと言われれば、個人的にはこちらの教会のほうが好きです。

別で記載することもあるかもしれませんが、サン・ジェルマン・デ・プレ教会は「ロマネスク」「ロマネスク」と記載されていますが、どうも外観にせよ、内部にせよ、ロマネスクらしいどっしりした感じや、もっさりした田舎くさい感じが感じ取れないのがその大きな原因だと思うのです。

外観ではゴシック的な飛びはりがあったり、大きな窓がなんとなくロマネスクらしさを削いでいたり、極めつけは内部に鮮やかに彩られたボールト、大壁、柱頭彫刻の数々。

この教会は数々の修復を繰り返されてきた教会ですが、19世紀に行われた、この大改修工事の結果、素朴なロマネスク建築という感じが完全に払拭されてしまったいて、残念に思うことが多いのです。

それに比べてどっしりと構えたサン・ピエール教会ははたから見てもロマネスクらしさを十分に感じられ、近年には画家ユトリロがこの風景を描いていますが、まったく変わらず今に残っていて、何かとても落ち着く教会なのです。

(ただし、歴史的見地から見ると、サン・ジェルマン・デ・プレ教会は非常に由緒のある教会なので、訪ねるべき教会であることに間違いはありません)


(ユトリロが描いた サン・ピエール寺院)

そして、テルトル広場からRue du Mont-Cenisを進んでいくと、おびただしい数のお土産屋さんの数。いかにサクレ・クールとテルトル広場が観光需要があるかを如実に示している結果でしょう。というのも左折してRue Cortotに入ると、この後お土産屋さんは一切なくなるのです。でも、モンマルトルの魅力ってこのあたりからだと思うのです。ちょうどRue Cortotに入る前には正面に坂があってちょっと開けた景色が広がります。先ほどサクレ・クールの前からも大パノラマをみたはずなのに、建物と建物の間から見えるパリ市の風景は、改めてこの場所が高い丘の上にあることを感じさせてくれるのです。

そして、Cortot通りへ。まず右手に音楽家エリック・サティが住んでいた家が見えます。次いで12番地の家、今はモンマルトル博物館の入り口となっていますが、ここはかつて、ルノワール、デュフィー、シュザンヌ・ヴァラドンとその息子ユトリロが住んでいた家があります。そして着きあたりのRue des Saulesを右折。しばらく歩くと右手にモンマルトルのブドウ畑Clos Montmartreが見えます。秋には収穫祭が行われ、非常に珍しく希少価値のあるパリのワインが作られている場所がここです。


(シャンソニエ ラパン・アジル)

そして道を挟んで対面に老舗シャンソニエのラパン・アジルがあります。かなり古くからあるこのシャンソニエは、元はキャバレーであり、初めは「暗殺者の酒場」という物騒な名前が付けられていたようです。

その後、所有者が変わり、「僕の連れ合い」という名前になったのですが、ア・ジル(A.Gill)という画科が店の看板にウサギの絵を描いたことにより、全部くっつけると、Lapin(ウサギ)、A Gillとなります。

ちなみに形容詞でAgile(敏捷な)というものがあり、これにひっかけてLapin agile(ラパン・アジル=すばしっこいウサギ)という店名となりました。20世紀には、ピカソ、ヴラマンク、サティ、ロートレックなど才気あふれる若手の作家や画家のたまり場だったところです。ちなみに、現在でもシャンソニエとして活動を行っています。

その後、ブドウ畑とラパンアジルの間を通る、Rue Saint Vincentを左折して進み、突き当りを左へRue Girardonを進み、まっすぐ行くと左手に登り坂が見えます。

このあたりになると、もう観光地という印象はほとんどなく、パリの下町という感じがたっぷり。絵になる通りRue de l’Abreuvoirが左手に見え、高台にサクレ・クール寺院が見えます。

クネクネと曲がった坂道がなんとも言えない雰囲気を作り上げている私がモンマルトルで好きな景色のひとつとなっています。

(ラブーヴォワール通り)




(ガレの風車)

再びRue Girardonを進み突き当ったところで、後ろを振り向くとラデの風車があり、ここが有名なレストランMoulin de la Galetteとなっています。

実際のmoulin de la Galetteの風車はここからもう少し西側にあり、ここが昔の大衆的ダンス・ホール。あのオルセー美術館にあるルノワールの「Moulin de la Galette」の舞台となった場所です。

ここからRue d’Orchamptを進んでいくと、今は看板だけとなっていますが、その時代、ピカソやマティス、モジリアーニが共同生活をしたアトリエ洗濯船跡があります。

ピカソが名作「アヴィニョンの娘たち」を制作をした場所としても知られていますが、もともとの建物は焼失してしまったので、現在のものは残念ながら再建されたものです。

この後、ブラブラとアベス広場のあたりまで坂道を降りて行くのが、私の定番の散策コース。アベス駅のあたりは活気があって、再開発も少しずつされているような感じを受け、新しいセレクトショップなども続々と進出しているので、ウィンドゥショッピングがてら、ブラブラ歩きをするのも楽しいところ。

感じもよくアベス広場に面したサン・ジャン・レヴァンジェリスト教会がいい味を出しています。新しい教会なのですが、レンガ造りで周りと比べインパクトがあるのでインパクトがあります。

少しルートは外れますが、ゴッホが住んでいた家、ムーラン・ルージュ、映画アメリの舞台となったカフェ「レ・ドゥー・ムーラン」なども歩いて訪ねられる場所。とにかくモンマルトルはところどころで足を止めて、その場所から見える景色をじっくりと楽しむこと。

たとえば、同じ場所でも坂道を降りてきて見える景色だけではなく、そこで後ろを振り返ってみたりすると、思いがけない景色が見られたりします。それは、この町が丘に築かれた町だから。そのため、印象派画家にテーマを絞った散歩コースも面白いと思いますが、時間があるのであれば、全ての道を歩いてみるくらいの気持ちで散策をすると思わぬ発見がある。お気に入りのモンマルトルのビューポイントを探してみるのも、ここの楽しみ方のひとつかもしれません。




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