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長谷川賢:「francer」

フランス全般に関する旅行情報や各地方や町の楽しみ方など、特に「地方色の豊かさ」をテーマに村めぐり、ワイン、地方文化などをテーマに綴ります。





第31回:マントン探訪

ニースから日帰りで、しかも一日存分に楽しめる町はどこか?という質問がでたらどう答えましょう?カンヌは町は大きいけれど、町そのものに大きな魅力がないので、イマイチ。

有名なエズ村やサン・ポールは村そのものが見ものではありますが、規模が小さいので一日全部使うほどではない。

モナコは一日じっくり楽しめますが、観光客へのオススメであればモナコ・ヴィル地区とモンテカルロ地区のカジノでおしまいとなるのが定番で、これだけなら、それほど時間は要しません。

アンティーブもピカソ美術館と旧市街散策だけであれば、半日で十分でしょう。いえ、モナコやアンティーブはもっと見どころはあるのです。

例えばモナコのグレース・ケリーのバラ園であったり、鍾乳洞であったり・・・アンティーブもフォール・カレという立派な要塞が建っていますが、ここまで行こうとするとアクセスそのものが難しい。

(綺麗だったので、エズ村からの景色)


(マントン旧市街を遠望)

そんな中、抜群の町があります。国境の町、マントンです。この町は国鉄駅にしろ、バスターミナルにしろ旧市街からちょっと離れているという難点はありますが、歩いて歩けない町ではありません。

そして、旧市街まで行ってしまえば、この近くにも見どころが満載。午前と午後にわけても十分楽しむことができる町です。

昔から好きな町でした。今回も訪ねれば楽しいのはわかっていました。でも、いざ訪ねてみて、知っているはずなのに、どこかワクワクしながら、町の中を歩ける町ってそうはありません。

マントンは常に新しい発見を提供してくれる。私にとって、そんな町です。

国鉄駅からは少し坂を下りてビオヴェ庭園へ。6月は花真っ盛りでとても美しく装飾されていました。周りにはオレンジの木々が連なり、これぞマントンという光景。

温暖な気候と名産となっているレモンとオレンジ産業が盛んであることがこういったところからも感じられます。そういえば、春先に行われるレモン祭りでは、このビオヴェ庭園はメイン会場となり、オレンジやレモンで作られた数々のオブジェが展示される場所でもあります。

マントンのカジノが見えたら目の前を左へ。ここからずーっとまっすぐ進むとほどなく歩行者天国地区に入りますが、まずは一つ目。マントンを訪ねる目玉ともなっている市庁舎を訪ねてみるのがオススメです。といってもお役所なので、中での仕事ぶりを見るわけでもなく、ここの婚礼の間を見に行くのです。

(ビオヴェ庭園 → )






(残念ながら内部は写真撮影が禁止)

マントン市庁舎の婚礼の間のデザインはコクトーがデザインしており、雰囲気としては近郊のヴィルフランシュの町にあるサン・ピエール礼拝堂のよう。

三方の壁と天井画をコクトーが手掛けており、やはりテーマは婚礼とマントンの町となっています。

マントンには、近年あたらしくできたコクトー美術館や海岸にたつ同じくコクトーの作品を多く展示してある美術館がございますが、これらの美術館の作品よりも、この婚礼の間のほうがずっと見ごたえがあって、私は好きです。

もちろん、コクトーがお好きであれば、この2つの美術館を訪ねて見てもよいのですが、私はどちらかというと、コクトー美術館よりも旧市街をじっくりと見るほうが面白のではないかと思う方です。

さて、先ほどの歩行者天国地区に入ります。ここからはたくさんのお店が店を構えるショッピングエリア。一般的なお土産店から、マントン特産のレモンを用いた製品を売る専門店なども軒を連ねる魅力的なエリアです。

個人的にお土産にオススメなのは、au pays de citronというレモンやマンダリンを使った製品のお店。オリーブオイルやビネガー、レモンリキュールやレモン風味のお菓子などお土産にぴったりなものが多く売られています。

そして、ここからが今回お伝えしたい部分。マントンの観光の基幹となっているのは正直コクトーです。新しい目玉となった新コクトー美術館と旧コクトー美術館、そして市庁舎の婚礼の間。

(レモン・リキュールが並ぶ店内)

ちょっと業界っぽいことを書くと、これらの表記が営業効果のある訪問地であることは間違いありません。つまり、「マントンに行って、旧市街を散策します」と書くだけだと、別段反応を示さないお客様が「コクトー美術館や婚礼の間にも入場し、コクトーの世界をご覧いただきます」と書くと、「お、じゃあ、行ってみようかな」と思うわけです。それが全てというわけではありませんが、ビジネスの世界では顧客があってナンボの世界なので、やはり顧客ウケがよいものを全面に押し出す傾向があります。しかし、ここは営業効果のあるものを紹介する場所ではありません。ですから、声を大にして言います。

「マントンで一番の見どころは旧市街に他なりません」

コクトー美術館や婚礼の間だけ見て、旧市街をゆっくり散策しないのは、「コクトーを見て、マントンを見ず」です。この旧市街の美しさは、私の大好きなニースと比べても甲乙つけ難い・・・というよりむしろマントンのほうが上です。


(時が止まったかのような、マントン旧市街)

マントンの旧市街へは、カップ広場から北に延びる坂道をいつも上っていきます。坂を上って道が平坦になってきたあたりから旧市街。

ここの雰囲気が抜群によいのです。ニースと同じくずっとサヴォワ公国の支配下にあったマントンの町はサヴォワ様式の温かい色壁の古い家並みが並んでいます。

このあたりはニースと同じなのですが、何が違うかと言えば人の数。ニースの旧市街はいつ行っても観光客でいっぱいですが、マントンでは逆に「こんなに人少なくていいの?」と思ってしまうほど。

その一番の理由はお土産屋などがすべて歩行者天国のサン・ミッシェル通りに集中しており、旧市街にはその類のお店が一切ないのです。お土産屋だけではなく、レストラン、カフェ、地元の人たちの商店も一切なし。

そう書くとまるでゴーストタウンのようなのですが、旧市街を散策するとそこに人は確かに住んでいるのです。 まるで時が止まったかのような魅力的な街並みをこのような場所でみることができるのは正直驚きます。

そして、サン・ミッシェル教会の近くへ。左手に階段があるので、これを上がっていきますが、上り切ったら、今上ってきた階段を上から眺めると白と黒の石で造られたモザイク画になっているのです。

それが最も美しいのがサン・ミッシェル教会前の広場。気付かなければ見逃してしまいそうな装飾がされています。そして、サン・ミッシェル教会の中へ。

この地方で最も美しく、もっとも大きなバロック教会としてその名を知られます。建造は17世紀、モナコ大公オノレ3世の命によって建造されました(1720-1795年)

(サン・ミッシェル教会)


正面から見て左側(写真には写っていませんが)にある塔は15世紀に作られたもので、この教会で最も古い部分です。

ちなみに右側の塔は18世紀前半(1701-03年)に作られたものです。その正面の建築様式を堪能してから中に入りましょう。

内部は確かに広く、天井や、祭壇の上部には美しい壁画が描かれています。内部ももちろんバロック様式ですが、注目すべき絵画や彫刻がいくつもあり、最も古い宗教画は、アントワンヌ・マンチェロ(Antoine Manchello)というモナコ人にによって書かれたもので16世紀にさかのぼります。

主祭壇の右手に飾られている絵で、この絵もそうですが、教会正面の彫像、天井画などにも大天使ミカエルが描かれており、すべて足元に悪魔を踏みつけて、退治している様子で描かれています。

これは大天使ミカエルが天使の軍団長と担っていたという聖書の記述によるものです。

(← 天井画にも大天使ミカエルの絵が)


また、サン・ミッシェル教会の隣には、少し小さな礼拝堂があり、日本語では白色苦行会礼拝堂と訳されています。 実はこの礼拝堂。私がなんどマントンを訪ねても扉が閉まっていたのですが、今回、なぜか扉が開いており、初めて内部を見ることができました。

「そんな、大したことないのかもな・・・」とあまり期待せずに中にはいったのですが、いい意味で完全に裏切られました。

「何、この豪華なバロック建築・・・」

三方の壁は豪華なエンジ色の布で覆われており豪華な雰囲気、祭壇はもちろん黄金色に装飾されており、天井は細かく美しい壁画で彩られている。

中でも祭壇上にある丸天井の4辺を彩っている壁画はマリア様を中心に描かれており、美しい濃いブルーで描かれているもので、とても印象的でした。

天井も聖母被昇天の絵が描かれているので、マリア様を中心に祀っているようでした。とにかく開いていれば(ここが一番のポイント)、是非入っていただきたい礼拝堂です。

(サン・ミッシェル教会)


(古城の墓地から望む、マントン旧市街)

ここから旧市街の奥の方へ。びっくりすることに、どこまで行っても、この魅力的な旧市街がずっと続いています。体力に自信のある方は、旧市街の上にある古城の墓地まで上るとマントンの絶景がご覧いただけますが、ゆっくり散策するだけでも十分に楽しむことのできる旧市街です。

昼食を含めて、これで一日かけてゆっくりとマントンを見ることができます。ちなみに、歩行者天国のサン・ミッシェル通りを通っていると噴水のある小さな広場が見えますが、ここから海のほうへ出ると、屋内市場があります。ここも活気があって、結構面白い場所です。

そんなこんなで、もう15回くらい訪ねているマントンですが、今回も新しい発見をすることができ、閑静で、落ち着いた美しい旧市街も健在、すばらしい時間をマントンで過ごすことができたのです。




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