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長谷川賢:「francer」

フランス全般に関する旅行情報や各地方や町の楽しみ方など、特に「地方色の豊かさ」をテーマに村めぐり、ワイン、地方文化などをテーマに綴ります。





第34回:アーヌ・ルーヴォーの街 ナンシー

今回の旅でもう一つ、楽しみにしていた街、それがナンシーでした。この町も知名度があるわりに行ったことがなかったので、やっと訪問できたという気持ちです。

ナンシーと言えば、まずはアール・ヌーヴォー。アール・ヌーヴォーは直訳すればART=芸術、NOUVEAU=新しい、で、新芸術という意味になります。

ロマネスクからゴシック、ルネサンスからバロック、そしてロココと進んできたあたりで建築美術は様々な方向へ向かい始めましたが、その一つとしてアール・ヌーヴォーということができるでしょう。

(ナンシー派美術館内)




(ナンシー派美術館、ガレ作のベッド)

アール・ヌーヴォーが生まれたのは19世紀の後半、ヨーロッパでは産業革命が起こり、建物にせよ、実用品にせよ、芸術性を軽んじた実用主義に陥ったものに、再び芸術性を取り戻そうという動きからでてきたものでした。

この動きは大都市パリやウィーンで大きく起こりましたが、小都市ナンシーでもガラス工芸品を中心にアール・ヌーヴォーの動きがでてきます。その中心になったのが、日本人にも人気の高いエミール・ガレです。

もともと鉱業が盛んなロレーヌ地方では、15世紀以降、ガラス工芸が発達していました。

ガラス職人であった父を継いで工芸作家になったガレは、19世紀公安に各地で開かれていた万国博覧会や装飾美術展に次々と出品し、1889年のパリ万博では、グランプリを受賞するほどとなります。

また、ガレは日本をはじめとする東洋美術にヒントを得て、植物や昆虫をモチーフに取り入れた作品を多く残しています。エミール・ガレ以外にもドーム兄弟やルイ・マジョレルなど、1890年代にはナンシー派が結成され、1901年にはガレを会長に産業美術地方同盟として正式にナンシー派が発足します。現ナンシー派美術館は、彼らのパトロンだったジュール・ボルバンの私邸を改装したもので、ナンシー派を中心とするアール・ヌーヴォー作品のコレクションを多く見ることができます。

アール・ヌーヴォーよりも少し遅れてくる様式にアール・デコがあります。アール・デコのデコはデコラティフ、つまり装飾芸術と訳することができ、ともすれば同じような印象を受けますが、アール・ヌーヴォーの特徴としては、曲線を多用、有機的、非対称であるのに対し、アール・デコは直線的であり、無機的で、対称な幾何学模様を多用するという点で見分けることができます。

そんなことを頭にいれて、ナンシーの街へでかけたのでした。

ナンシーの街を歩く時、街の中心となるのは、世界遺産に登録されているスタニスラス広場。当時ロレーヌ公国の首都であったナンシーを治めた元ポーランド王スタニスラス・レスチッスキに由来する名前です。

街の中心を優美に飾るこの広場は、スタニスラスがナンシーの都市改造をする際に作ったもので、18世紀のヨーロッパを席巻したロココ様式で統一されています。

現在でも疲れている市庁舎を中心に、外観と高さを統一されて作られた建物、四方に作られた門とその門を飾る優雅な装飾は当時流行っていた鉄鋼細工で作られ、金箔で彩られています。

(スタニスラス広場のネプチューンの噴水)




(ライトアップされたスタニスラス広場)

金色と黒色によって作られる色彩対比は昼間も美しいのですが、夜には照明によってライトアップされ、一段と輝きます。

ちなみに、草木を巻きつけたような装飾が多いスタニスラス広場は、ナンシーの枕詞にもなるアール・ヌーヴォーに通じているとも言えますが、あくまでもこの様式はロココ様式の時代に作られたもので、少々アール・ヌーヴォーとは時代が違うという点は気をつけなければなりません。

当時は町中のいたるところにアール・ヌーヴォー様式の建物が作られたのでしょうが、今でもいくつかのアール・ヌーヴォー様式の建物が残っています。その中でもこれは美しいと思ったものがいくつかありましたので、ここでご紹介しようと思います。

まず、最も良かったのは、クレディ・リヨネ銀行内の天井のステンドグラス。ステンドグラスそのものは、中世の時代からあったものですが、一般的な建物に使われることは稀でした。

ここのステンドグラスは細い線と曲線を多用した繊細なもので、中央にCとLのマーク(クレディ・リヨネの頭文字)が配置されています。

そして、いかにもアール・ヌーヴォーらしいものは、ナンシー商工会議所の扉。マジョレルによって作られた鉄の扉の装飾と、その横にはナンシーやロレーヌ地方をイメージして作られたステンドグラスが並んでいます。

そして、内装が優美で雰囲気がよいのは、駅近くにあるレストラン「Excelsior Flo(エクセルシオール・フロ)ホテルとして建てられた建物で、店内は松ぼっくりをイメージしたランプや松やイチョウをモチーフにしたステンドグラス、シダの模様の彫刻が入った柱などで飾られています。雰囲気はいいのに、値段もお手頃なので、ナンシーに来たら一度は立ち寄ってみたいレストランです。

(クレディ・リヨネ銀行のステンドグラス)




(ライトアップされたスタニスラス広場)

あまり、のんびりと街を歩いたりすることはできませんでしたが、今回の旅でナンシーが印象的になったのは、宿泊したホテルがよかったことも挙げられます。世界遺産のスタニスラス広場に面したホテル「Grand Hotel de la Reine」はスタニスラス広場が面した時代に建てられた歴史ある建物。

姫のホテルと名付けられたホテルには、実際にマリー・アントワネットが宿泊したこともある由緒あるホテルで、ホテルの雰囲気も抜群で、部屋も落ち着いており、レストランやサロンも雰囲気があります。

スタニスラス広場は日中でも美しい広場ですが、やはり夜は別格。広場全体がライトアップされ、その光景はなんともムードがあって、お勧め。

ナンシーに泊まったら是非ともご覧いただきたい光景であり、ホテルをでてすぐ世界遺産の広場というこのホテルは世界遺産との一体感を感じられるホテルでした。




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